誤解されがちな「作り込みをしない」の意味
WEKDAは、大規模Web情報分析システム「WISDOM X」が40億以上あるWebページから取り出す知識を利用して、様々な話題に対して対話を行うシステムである。 WEKDAは「作り込みをしない」ことをウリにしている。これは別に手を抜いているだとか、それが秘訣だとかいう話ではない。 大なり小なり人工知能の仕組みについて勉強すると解ると思うが、自分で全てプログラムするにしてもディープラーニングを使うにしても、チャットBotが「何を喋るか」「何に反応するか」は人間が決める必要がある。大抵の場合、そのチャットBot毎に専門分野があり、それに加えて挨拶・時間・天気などの定型文だったり、多少の冗談が言えるようになっていたりする。一方で、それ以外の会話を振ろうとしたら「質問の意図が理解できませんでした。」と言われる。人間が決めている以上、限界があるのだ。 WEKDAは簡単に言えば検索エンジンのインターフェースのようなものである。今の時代、GoogleやYahooを使ったことがない人は極少数だと思うが、全く意味不明の文字列を入力しない限り、検索エンジンはユーザーが求めた情報を(内容の是非は置いておくが)拾ってくる。
検索エンジンと人間の想定、どちらが多くの要求をカバーできるかは自明だ。 つまり、「作り込みをしない」とは会話のレパートリーに対して人間による調整をしないということを表すのだ。
WISDOM X とは?
WEKDAは同じくNICT様の開発したWISDOM X(http://wisdom-nict.jp/#top)で検索した内容をユーザーの発言に対する回答とする。WISDOM XがGoogleやYahooといった検索エンジンと違うのは、キーワードではなく質問に対する検索を行う点だ。 例えばあなたがテニスを上手くなりたかったとする。その方法をネットで検索する場合、多くの人は「テニス 練習方法」といったキーワードで検索するのではないだろうか。そして「テニスの上達の仕方は?」という質問調で検索することはほぼ無いはずだ。それはキーワード検索においては「テニスの上達の仕方は?」という文章が実際に含まれているページしか検索に引っかからないと考えるからであろう。(実際には結構普通に検索に引っかかるのだが) WISDOM Xは質問専門の検索エンジンである。実際に「テニスの上達の仕方は?」と打ち込んだ場合は下のように取得ができる。
しかしより特筆すべきは、単語を打ち込んだ場合はその単語を含んだ質問を提案してくるということだ。
これは質問の回答の中に含まれる意外な気づきを利用者に与えることで多岐にわたるイノベーションを生み出すためだそうだ。
「作り込みをしない」けど
WEKDAは、ユーザーからの入力をディープラーニングを用いてWISDAM Xで検索ができるような質問に翻訳する。WISDAM Xが検索した回答は、例えばユーザーのもとの入力が雑談であれば軽めの会話、困りごとであればアドバイスの形になるよう加工をしてからWEKDAの回答として表示される。会話のレパートリーこそ作り込みをしていないのかもしれないが、対話らしくするための作り込みはしっかりされていることに感心させられた。