「セカンドライフ」と現代版メタバースの違い
2007年、「Second Life(セカンドライフ)」がブームとなりました。ネット上の仮想空間を移動するのはオンラインゲームと同様ですが、単に遊ぶだけではなく実世界のように土地を購入できるほか店舗を構えてゲーム内のアイテムを売買することができます。 セカンドライフ内の通貨は米ドルと換金可能なため、新たな経済活動の場として注目され、企業も参入しました。しかし、当時のPCスペックや通信環境、そして実質的な活動が宣伝に限られるという点からあっという間にブームは去り、2007年末には下火となりました。 さて、「メタバース」は様々な関連サービスも提供されていますが、かつてのセカンドライフと違って「実体経済」とリンクしている点が特徴です。Facebookもメタバース関連事業にシフトするとして、2021年10月28日に社名を「Meta」に変更しました。 そしてメタバースでできることは主に3つに分けられます。それぞれの例を見ながら、普及によって何ができるようになるのか見ていきましょう。1)娯楽・ゲーム:『あつ森』もメタバース
ゲーム用のメタバースはいわゆる「オンラインゲーム」として古くから知られています。意外にも身近なメタバースとして『あつまれ どうぶつの森』が当てはまるでしょう。同時に入れる人数は限られますが、同一の仮想空間上で釣りをしたり、アイテムを集めたりすることができます。 他にも多人数が同時参加するオンラインRPGをあげればキリがありません。『GTA Online』など、もともとはオフラインでの遊びがメインだったゲームもオープンワールドを通じて大人数で遊べるようになっています。2)仕事:進化を続ける会議アプリ
コロナ禍では感染防止のためテレワークが推進されました。しかし通常のビデオ通話、チャットアプリでは可能なことが限られ、臨場感も得られないためコミュニケーションが取りづらいという意見も聞かれます。仮想空間で仕事ができればテレワークを効率化できるかもしれません。 Facebook(現:Meta)が提供する「Horizon Workrooms」はVR参加型の会議アプリです。VR空間上であるため実際のように会議室を見渡すことができ、皆がアバターとして参加します。 会話だけでは単なるゲームと変わりませんが、VR空間内のPCを通じてエクセル・ワードなどのファイルを映し出せるほか、バーチャル会議室内のモニターに資料を映し出すことも可能。Horizon Workroomsを使えば淡々としがちなビデオ会議もより密な議論ができるかもしれません。3)ショッピング:BEAMS店員がアバターが接客
ショッピングもメタバースが活用できる分野です。もちろんショッピングといってもアバター用のキャラクターを購入するのではなく、実世界で使う服や家具、雑貨類の購入を表します。「バーチャルマーケット(Vket)」はVR空間上で催される日本発の祭典です。 2018年から定期的に開催されており、7回目の「バーチャルマーケット2021」は2021年12月4~19日の期間で開催されました。秋葉原や渋谷を模した街や空想のワールドが展開され、企業や一般サークルがバーチャル店舗を出店しています。 アバター用の服やアイテムの販売、宣伝を目的とした店舗が多数を占めますが、アパレル大手の「BEAMS」はデジタル商品だけでなく限定のリアル商品を販売しました。アバターを通してスタッフが接客する場面も見られ、メタバースの未来が垣間見えます。 自作PCユーザーの間では有名な「玄人志向」もPCパーツ店を出店し、Vketを通じてリアル商品の販売を行いました。現段階では販売よりも宣伝を狙った出店が多く見られますが、Vketは回を重ねるごとに企業の出店数が増えており、メタバースが注目されていることが分かります。実際の街と同じ設計が必要か
メタバースは娯楽・仕事・ショッピングの3つの場で活用されそうですが、普及するには実際の街と同じような設計が必要と考えられます。単なるライブ配信用のメタバースでは著名なアーティストを採用しなければ集客を見込めないでしょう。 企業によって異なるサービスを利用していた場合、仕事用のメタバースは自社内でしか活用できず利用者が減少してしまうかもしれません。この先サービスの統一化が求められるでしょう。ショッピング用のメタバースも同一空間上の出店数が少なければセカンドライフのように衰退してしまいます。 実際の街や複合商業施設のようにライブ会場とショッピングモールが併設されたメタバースが形成されれば、様々な娯楽を一つの場で楽しめるため集客が期待できそうです。株式会社ノードコミュニケーション 寺田 永史